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さよならピアノソナタ / 杉井光 


さよならピアノソナタ (電撃文庫)さよならピアノソナタ (電撃文庫)
(2007/11)
杉井 光

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ネット上で地味に評判高かったので手を出してみた。まず、本編が全4冊で完結してることを大いに評価したい。その後に外伝として短編集が1冊発売されている。

ピアノとヴァイオリンとギターとベース。ベートーベンとThe Beatles。クラシックとロック、音楽全般に対する知識と愛。これらを上手く料理してる作品。“文学少女”シリーズの音楽バージョンのイメージ?ちょっと違うかw

物語の骨子としては、ツンデレ美少女ヒロインと鈍感ヘタレ主人公の青春もどかしラブストーリー。偶然の出会いの後主人公の学校に転入してきたり、お互いにツンデレを発揮してなかなかうまくいかなかったり、最後の持って行き方も含めて、とてもありふれた話。ありふれたプロットを非凡な作品に仕上げるのは大変だと思うけれど、この人はそれをラノベの枠の中で丁寧にこなしている。
そしてヒロインは天才ピアニスト。これはよくある設定だと思うが、主人公が評論家というのはどうだろう。少なくとも自分には新しかったし、そのおかげで共感出来る部分も多かったように思う。

文章は昨今のラノベのように一文ごとに改行をしたりしていない。地の文は主人公の一人称の口語だし、心の中での突っ込みは時に寒いけど、ラノベと思えば許容範囲であり、読みやすい語り口。独特の比喩表現も目を惹いた。「ワイングラスを床にたたきつけたみたいにきれいな声」「空間ごと鋏で断ち切るような真冬の声」とか。こういう、いろんな上手いことを言ってる小説を読むと、自分には文筆業は無理だなーと感じる。

主人公の心情とか、楽器奏者としての、ミュージシャンとしての衝動、情動、感傷みたいなものも、あらゆる言い回しを駆使して伝えようとしている。この表現力には脱帽。

そういえば神楽坂先輩の演説も好きだった。ジョン・レノンを革命家に見立てての「史上最も成功に近づいた革命家である彼は、まずそれ以前に音楽家だった。戦う前から、世界中が彼を見つめていた。五百年後、千年後の後に、ミハイル・バクーニンやレフ・トロツキーの名が全て忘れ去られても、ジョンの名前だけは残るだろう。なぜならね、本質的には、言葉だけでは人の心には届かないからなんだ。言葉をほんとうにタマシイの底にまで至らせる方法は、たった二つしかない。血を流すか、歌を流すか、だ」みたいな思想は、よくある言い回しなのか、著者の中にある音楽信仰の現れなのか。

文学少女シリーズも著者の本に対する愛が溢れ出てはみ出てて大好きだけど、こちらも負けずに著者の音楽に対する愛(というかリスペクト?)がなみなみと注がれていて、非常に気持ちよかった。

あと、主人公がとても綺麗な形の(?)ハーレムを形成してるので、ギャルゲーに移植して丁寧にサブヒロイン√も作れば先輩も千晶も救われるんじゃないk

外伝の1冊も蛇足にならずに、最後まで綺麗にまとめてくれました。オーラスが哲朗パートだというのがまた、良い。


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哲朗の評論家哲学も至言だと感じたのでメモ。音大の教授に「君は他人を馬鹿にする能力だけはあるから、それでなんとかしなさい」と言われたことから、仕事を「他の誰かを幸せにすること」と定義し、「だれかを馬鹿にする文章を書いたら、馬鹿にされていない読者は相対的に少しだけ幸せになって、おれに金をくれる」と宣う。おちゃらけているようでいて、実は正鵠を射ているんじゃないだろうか。
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