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出版大崩壊 / 山田順 


出版大崩壊 (文春新書)出版大崩壊 (文春新書)
(2011/03/17)
山田 順

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電子書籍に淡い恋心を抱いて長年勤めた紙媒体の出版社を辞めるも、どんなにアイディアを尽くしても電子書籍は気持ちを受け止めてはくれず、遂には電子書籍は世界を滅ぼすと言い始めたおじさんの手記。「あのブドウは酸っぱいはずだ」と言い張るどこかのキツネさんを思い出した。

著者は、2010年の「電子書籍元年」は空ブームだったと断ずる。e-Reedingのハードが整ってない日本では電子書籍売上574億円のうち8割以上がガラケー向け漫画で、しかも一番の売れ筋はエロ・BL・TLであること。既存の出版流通の仕組みや複雑な著作権事情がまともな市場形成の足枷となっていること。消費者が無料の情報ばかりに食い付き高いリテラシーで以てハイクオリティな本を選んでくれないとこ。…などが理由として挙げられている。

この著者は何も、真っ向から電子書籍を否定しているわけではない。一度は可能性を感じて会社を辞め、事業を始めた人なのだ。その意味で、思い切った戦略を取れない出版業界の感覚や、自信の事業の失敗経験から語っているので、大局的な分析としては概ね頷ける。

しかし、最後の所で示す結論に納得がいかない。次々に潰れる新聞社や出版社ばかりに気を取られて「電子出版文化は決して大成しないし、デジタル化によって出版文化そのものが崩壊する」という未来を決めつけているように見受けられる。デジタル時代には従来の著作権ではない新しい権利法が必要だ(p156)なぜ、紙のときと同じように、ウェブの世界でもパッケージメディアとしての「本」「雑誌」「新聞」を維持しなければならないのだろうか(p187)、といった形で新しい潮流に対する鋭い指摘を折角しているのに、勿体ない。失敗経験が悔しいのはわかったが、仮にも編集者であるなら、その悲しい未来を回避すべく提言をしてほしい。

これを読んで『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚、ディスカバー・トゥエンティワン)を思い出した。業界と自分の失敗例を書き連ねて出版に未来はないと吐き捨てる山田順。成功例に光を当てて"刺激的な未来"を見据える佐々木俊尚。どちらの主張に傾聴するかは読み手次第だが、この本一冊だけで電子書籍に絶望せず、出版文化を愛するいち読者として、議論に参加していきたいとは思う。



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