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なぜうつ病の人が増えたのか / 冨高辰一郎 


なぜうつ病の人が増えたのか (幻冬舎ルネッサンス新書)なぜうつ病の人が増えたのか (幻冬舎ルネッサンス新書)
(2010/08/25)
冨高 辰一郎

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日本の鬱病患者数は1999年から急激に増加し、その後6年間で2倍になったという。一般的には不景気などを背景に社会ストレスが増大したことが原因であると説明されることが多い。しかし、著者はこのストレス仮説に疑義を投げかける。経済不況の影響を受けにくい公務員にも民間企業と同じように鬱病が急増していることを指摘し、不景気以外の「何か」が影響しているのではないか(14.2%)というのが、本書のモチベーションである。

始めの方を読んでいるうちは、著者の主張をなかなか理解できなかった。しかし鬱病啓発に製薬会社がどのように関わっているのかを論拠を示しながら説明してくれるので、最終的には、そういう側面も少なからずあるのだろうと、大いに納得した。

本のタイトルに対する著者の一つの答えが、SSRI(新しい抗鬱薬)の導入によって、逆に世の中の鬱病患者数は増えるという、俄には信じがたい主張である。ロジックとしては、こんな感じ↓

SSRIが認可される
→製薬会社は新薬を売りたい
→製薬会社主導で鬱病の啓発活動が進む
→「鬱は病気である・薬で治る」という認識が一般人・専門家に定着する
→鬱病による受診が増え、必要以上に薬の処方が増える


欧米では日本より先行して同じ現象が起きており、さらにそのことに関する社会的関心も高まり、「病気作り(disease mongering)」として議論も活発化しているという。そういった現状を見て、日本もこのままで良いのかと、著者は社会に問い掛けている。そこには、財政悪化により公共事業にはテコ入れがあるものの、有効性の乏しい薬に関しては手付かずである(30.9%)という問題意識も含まれている。国の歳出に占める公共事業比よりも、医療費の方が圧倒的に多いのだそうだ。

もちろん著者にしても、この製薬会社主導の啓発活動や鬱病に対する認識が定着したことを一概に否定している訳ではない。SSRIの薬理効果が本当に喧伝されているほどのものなのか、その啓発活動がフェアな研究内容に基いたものなのか、という問題提起だ。製薬会社から学会や研究者に対して、綺麗とはいえないお金の動きもあるらしい。


またこういった議論を読む中で、「自分の主張に都合の良いデータだけを抽出しているのではないか?」というクリティカルな姿勢は重要だと思うが、そういった部分にも先回りして補足してある箇所が散見され、その中立的であろうとするスタンスは素晴らしいと思った。
ex)"なお、ここに名前が挙がっていない国は、こういった現象が認められなかった国ではなく、抗うつ薬の販売量のデータが手に入らなかった国である。(19.7%)"

初稿の時点では専門家に向けた本のつもりで書いていたらしく、全体的に研究データを重視した学術論文のような雰囲気はある。読みにくい人には読みにくいかもしれないが、精神科医としての、研究者としてのフェアネスは感じる。当たり前に見えることでも、問題意識を持って読み解くことが大切なのだという勉強にもなった。気がする。


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電子書籍について。iPhoneアプリで読んだのは初めてだったが、特に読書に支障はなかった。しかし本のページ数はフォントサイズや行間の設定によって変わるので、パーセンテージで書いてみた。アプリの起動に5秒くらいかかるのがもうちょっと短縮されないかなと思ったのは、贅沢かなw
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