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学者のウソ / 掛谷英紀 


学者のウソ [ソフトバンク新書]学者のウソ [ソフトバンク新書]
(2007/02/16)
掛谷 英紀

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本書を読みたい本として読書メーターに登録してから暫くして、偶然この著者の講義を受けた。折角なので急いで買って読んでみた。理系専攻でありながら、世の中のことにも広く興味を持って取り組んでおり、NPOまで設立して活動する姿勢に共感しつつ尊敬する。

第1章「学者のウソ」で、住基ネット・ゆとり教育・脱ダムなどの社会的議論になったトピックを取り上げ、その論争の中でどんなウソが横行していたかを紹介する。更に、理系学問で顕著化する"「研究の公共事業化」(p47)"に警鐘を鳴らし、文系学問の世界の言論に対する無責任を批判する。特に女性学の学問文化に対する批判は凄い。例えば、「第5回女性の活躍推進協議会」議事録の紹介が面白い。あまりに酷すぎて面白い。ここでは、女性活躍の企業ランキングをやってみて、"相関関係がうまくある程度出たら、そのまま出し、全くアットランダムだったら、業績とは関係ないかもしれないけれども、長期的に、国際的に見て、女性の管理職の登用が遅れているから、上げなければならないというのを別な言い方でもって、持っていくという手もあります(p71~)"というような統計データを恣意的に取り出そうという会話が堂々と公開されている。厚労省のサイトには何故か該当議事録が載っていなくてリンクできないのが残念。

第2章では、なぜ学者の世界がここまで堕ちてしまったのかを考察している。学問を「予測力を持つ知識体系」と定義して(これには異論があるが)、学問的手法の歴史的変遷を紹介し、そこからつながる学歴エリートの倫理崩壊を訴える。学問が発展して、非線形システムを扱うことが多くなった。非線形な世界では、結果予測を確率的にしか記述できないので、それを社会に組み込むときに齟齬が起きるという話だ。一般化しすぎて分かりにくいという人も多いだろうが、理系人間的には感覚的に納得できる。

第3章では、倫理問題の対象を学歴エリート全般に広げて考察している。ここでは主にマスコミが批判対象。独自の「科学的」研究結果で、企業不祥事の報道において"朝日新聞についてはスポンサーへの配慮が記事に影響を及ぼしている可能性がきわめて高"く、"読売新聞にはスポンサー・非スポンサー間で有意な差は見られなかった(p139)"という。この調査は、一つの指標としては面白い。(しかしここで読者には、「この調査も一つの指標でしかない」というクリティカルな姿勢も求められていると思う。)その他にも、よく言われているような批判から著者独自の観点までさまざまな角度から、学歴エリートが本当に高給を得るべき立場なのか、高給に見合った責任を果たしているかを問い掛ける。

そして最後に第4章で、エリートたちのウソを見破る手立てを提案している。目的と手段を分離すること。共有する価値を見いだすこと。可逆性テスト。どれも、言うは易し行うは難し。しかし最近の世の中の右傾化の原因分析(p219)には大納得だった。そうなんです。私も最近右傾化が著しいと自覚しているが、それは何も、左翼的な理想を否定している訳ではない。左翼的言説にはあまりに現実を無視した議論が多すぎて聞く気になれないだけだ。左翼の突っ込み所が多いからだろうが、著者も右翼だと揶揄されるらしいが、右翼の矛盾にも突っ込んでバランスを取っている。

講義を聴いていても感じたことだが、この著者は、むしろ確固たる信条はほとんど持っていないと思われる。ただ、識者たちがドヤ顔で議論になっていない議論を繰り返していることに、辟易しているのだと思う。そこで著者は、言論責任保証協会というNPOを設立したらしい。回りくどくて言論責任保証システムとしては成功するように見えないが、本書もその保証制度に乗っかっているという。具体的な提言を伴っていることと、言動に常に一貫性があるそのスタンスは評価したい。(何様のつもりなんだろうw 講義のレポートも早く書いてしまわねば。というか、何かの拍子でこの感想見られたら特定される気が…w)



ウソという言葉は多少過激な表現であるが、どのような言説にも、意図的な誘導や過失による間違いは紛れてくる。そのことに対する「そういうものだ」という前提意識が、受け取る側に必要。ここ数年、そんなことをずーーっと思っているのだけど、それを社会が獲得するのはなかなか難しい。

まあ要するに、刺激的で良い読書だった。この類の本は、著者の主張に賛成するか否かで評価は分かれないと思う。論点を受け取って、読者それぞれが考える作業が大切だと思うんだな。
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