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TPP亡国論 / 中野剛志 


TPP亡国論 (集英社新書)TPP亡国論 (集英社新書)
(2011/03/17)
中野 剛志

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最近、我々一般市民はマクロな問題についてどこまで知りるべきで、どこまで考えるべきなのかということについて、悩んでいる。本書については、著者がTPPについて言及している動画を幾つか見て興味を持ち、手に取った。独特の口語で文章が書かれているので、読みながら著者の声で脳内再生されるw

これは震災直前に書かれて震災直後に発売された本です。著者は経済産業省から京都大学に出向している研究者で、TPP絶対反対の論陣を張っている。しかし「戦略」という言葉を丁寧に考えている折角の良書なのに、帯で「アメリカの仕掛けた罠!日本はまた嵌るのか!?」と安直に煽っているのは勿体無い。

TPP賛成派の論拠を丁寧に虱潰しにしていく内容については、とても分かりやすい。接続詞が多い文章なんだと気付いた。英語でいう関係代名詞的な表現を避けて一つの文を短くし、適切な接続詞で次々に繋いでいく文章になっている。だからテンポがいいし、読んでるだけでそれぞれのポイントが矢印を用いた相関図となって頭の中に流れ込んでくる。TPPについてだけではなく、世界経済の現状について、日本が抱える宿痾について、非常に勉強になった。

とりあえず単純な話として、今の日本経済においてはデフレからの脱却が最優先事項であるという見解に対する反論は見たことがない。増税もTPPもデフレ下における政策としては最悪である(らしい)のに、まともな議論も経ずに決めてしまおうというのはどういうことなの。政府の外にいる一研究者が、公開情報だけに基づいてこれだけの検証ができるのである。非公開情報も含めて手元にあるはずの首相以下政権与党は、本書にある詳細な議論に対して一つ一つ反論できるだけの根拠を持って、TPP交渉参加を決めたのだろうか。

読書メーターの感想を見ると、著者が感情的になっている部分が多々あるとしている人も見られるが、私は決してそんなことはないと思う。感情が込められた一冊ではあるが、感情が先走ってロジックが崩れるような書き方にはなっていない。その辺りの塩梅も上手いと感じた。



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以下、自分なり(というか自分のため)の内容memo。

はじめに
この本は、国家機密情報をリークするとか、外国の陰謀をあばくとかいったものではありません。ここに書かれていることは、すべて、公開情報をもとにしています。そして、誰にでも手に入れられる情報をもとにし、誰にでも納得できるような論理を用いて、日本のTPP(環太平洋経済連携協定)への参加について反対し、その根拠を明らかにします。それだけのことです。(P3)

第一章「TPPの謎を解く」
WTO・FTA・EPAとの違いを明確にしながらTPPの性質について。日本が加入した場合の参加10ヵ国のGDP比は米:日:その他=7:2:1であることから、これは実質的に日米FTAであり「アジア太平洋」というのは名前だけだ。手段であるはずのTPPが目的化している(p52)。

第二章「世界の構造変化を読む」
アメリカの過剰な消費が世界経済を牽引するというグローバル・インバランスの構造はリーマン・ショック以後の世界では持続不可能であり、世界経済の安定のためにはこの仕組みをリバランスすることが必要である(p70)。そのためには、貿易黒字国である日本は輸出主導ではなく、内需主導の成長によって輸入を増やすべき(p72)である。また、TPPは所詮、米オバマ大統領の輸出倍増戦略の一環であり、アメリカの、アメリカによる、アメリカのための貿易協定に過ぎない(p83)。現状では関税よりも為替レートの影響の方が遙かに大きい。経産相のシナリオはほとんど「風が吹けば桶屋が儲かる」に近い(p103)。

第三章「貿易の意味を問い直す」
貿易黒字=経済成長、貿易赤字=経済衰退ではない。
GDP=消費+投資+経常収支(+政府支出)
 ∴ 経常収支≒GDP-消費-投資=貯蓄-投資 (∵貯蓄=GDP-消費)
 ∴ 経常収支>0 ⇔ 貯蓄>投資
   経常収支<0 ⇔ 貯蓄<投資
即ち、経済収支黒字は貯蓄額より投資額が多いことを、経常収支赤字は貯蓄額より投資額が少ないことを意味するだけであり、国民経済にとって黒字が良いか赤字が良いかは一概にはいえない(p113)。日本経済が停滞しているのは内向きで元気がないからではない。元気があれば何でもできるのはアントニオ猪木だけ(p125)であり、とにかくデフレを脱却しないと話にならない。貿易自由化はデフレを助長するものであり、最悪である。

第四章「輸出主導の成長を疑う」
'02~'06年、日本は輸出主導による経済回復を果たしたが、この間にも一人当たりの給与は(特に大企業で)下がっている。基本的にグローバル化は、輸出企業の労働力の低賃金化を招く(底辺への競争)ので、グローバル企業と国民の利益は一致しない。とにかく今は公共投資などで内需を刺激し、デフレ脱却すれば、TPPに加入せずとも輸入は増える。アメリカにとっても世界にとっても、中長期的にはその方が喜ばしいはず。内需拡大は「内向き」ではなく真に「外向き」な戦略である。

第五章「グローバル化した世界で戦略的に考える」
主流派の経済学は貿易が常に互恵的(win-win)であるというが、それは幻想である。実際には資源や穀物などの戦略物資の価格支配力は、時に政治にも利用される。日本が自動車をアメリカに輸出し、アメリカが日本にトウモロコシを輸出する関係は互恵的ではない。アメリカは日本から自動車を買わずとも困らないが、日本がアメリカ以外の国からトウモロコシを買うのは容易ではない。アメリカの戦略に思考停止で乗るのではなく、ある意味でアメリカをも「仮想敵国」とした「戦略」が必要なのである。

第六章「真の開国を願う」
なぜ内閣官房や経産省はここまで強引にTPP参加ありきで進めるのか。それはまさに「対米依存の安全保障を続けるためには、アメリカの主導するTPPへの参加が不可欠」という強烈な先入観があったからに違いありません(p236)。明治維新から140年経後のTPP騒動が示しているのは、日本が「自から守る力」「自立の力」をもっていないだけではなく、もとうとすらしないということ(p240)である。
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