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ユーラシアの双子 / 大崎善生 


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ユーラシア大陸の東端から西端までを鉄道で横断という完全取材を経て紡ぎ出された長編小説。上下2冊。

自殺によって長女を喪い、離婚を経て、50歳で会社を早期退職した石井は、ふとした思い付きからユーラシア大陸を鉄道で横断する旅に出た。そしてウラジオストックのカフェで、自分と同じルートで自殺を決意して旅をしているという少女エリカの存在を知ることになる。そこから、石井の旅にはエリカを救うという具体的な目標が付与される。

溶かすのだ。
自分の中の永久凍土を。そうすることによって凍り付いてしまった自分の感覚や感性を蘇らせるのだ。それを知るためにシベリアを走り、そしてそれを氷解させるために、スペインやポルトガルの太陽が必要なのだ。

車窓に流れゆくのは荒涼としたタイガ、主な食事はいいちことカップ麺、旅の道連れは偶然同室になった全身黄色の服を着た日本人の青年。先を行くエリカの手がかりを探しながらも、シベリア鉄道という名の走る監獄の中で、自分の歩んできた人生を、犯してきた過ちを噛み締めて、石井は日々を過ごす。娘はなぜ死んでしまったのか、娘を死に追いやったのは何者だったのか、自分はなぜエリカを救おうとしているのか、死んだ娘とエリカの不思議な符合とは、そしてユーラシアの双子とは。。



全体として、大崎さんの文章フェチとしてはそれなりに読めるけど、小説として面白いかというと、やはり微妙だったように思う。

ロシア、ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガル。ユーラシアの様々な土地の描写は、著者が実際に観てきた世界がそのまま小説になっているだけあって、臨場感に溢れて美しく、読者も一緒に旅をしている気分になれる。いろんなものを喪って内向的に回顧と自己分析を繰り返す主人公についても、いつも通りの大崎節が全開で安心して読めた。

ところが、死に魅入られた人間として描かれたエリカの行動に、リアリティを感じられなかった。"光もなく絶望に塗りつぶされている"瞳の少女が、果たして自分の最後の旅をブログに書き残すだろうか。仮に書くとしても、小説の中でエリカが書いていたような語調には、どうしたってなりえないと思うのだ。まあその辺りの感性は人それぞれなのかもしれないが、その違和感が拭いきれず、感情移入し切れなかった。

ユーラシアの西の果て、リスボンでのシーンからラストに至るまでの流れは、なかなか良かったので、個人的にはそこそこ満足な一冊(というか二冊)になりました。



ところで。
この小説は2010年11月の発売だが、2012年3月に『西の果てまで、シベリア鉄道で』という本が出版されている。この小説のための取材旅行記なのだが、内容があまりに重複している。先にこちらの方を読了していたので、この小説を読んでいても既読感がすさまじかった。


関連:
■書評『西の果てまで、シベリア鉄道で -ユーラシア大陸横断旅行記』
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